Claude Codeで他社モデルが動く非対称性からMCP解剖まで — AIベンダー戦略を対話で掘って記事5本を書いた日
朝のXで、OpenAIの開発者がライバルAnthropicのClaude Codeの中で自社最新モデル(GPT-5.6 Sol)を動かす手順を聞いている、という話題が流れてきて思わず笑った。この「流れのおもしろさ」をClaude Codeに投げたところから対話が転がり続け、気づけば公開記事5本・SVG図解18枚を書かせる1日になった。
発端: ライバルのハーネスで自社モデルを動かす手順
まず話題の経緯を調べてもらい、ついでに手元のcodex CLIのモデル指定をGPT-5.6 Solに変えてもらった。miseで0.125.0にピン留めされていたcodex CLIを最新の0.144.3に上げるところまで一気に片付いた。
ここからが本題。「これ、GPT-5.6 SolをClaude Codeハーネスで使うってことは、APIを叩いて従量課金でやってるってことですよね」と聞いたら、逆だという答えが返ってきた。従量課金APIではなく、ChatGPTサブスクリプションの枠内で使えている。プロキシがAPI形式を翻訳し、課金は定額の中に収まる。そこがこのレシピの肝だった。
もうひとつ引っかかったのが規約の向き。サブスクのOAuthトークンをプロキシ経由で他社ハーネスに使わせる行為を、OpenAIは許容し、Anthropicは規約違反として禁止している。トークンの整理もひとつ勉強になった。OAuthトークンは常に発行元のバックエンドに流れる。変わるのは「どのハーネス(クライアント)がそのトークンを使うか」だけ。ハーネスとモデルは別レイヤーという見取り図が、この日の議論全部の土台になった。
「OpenAIはかなり大盤振る舞いしているのでは」と重ねたら、「差し出しているものはほとんどタダで、失うものがない攻めの一手」という分解が返ってきた。これは面白いので公開記事にしよう、と決めて図解付きでまとめさせた。
図3枚はlintと禁止語チェックを通し、dev環境で描画とコンソールエラーなしまで確認させてから完成扱いにした。
App Serverと「計算資源で奪って、エコシステムで囲う」読み
記事が済んだあと、ふと思いついて「OpenAIのこの戦略ゆえにCodex App Serverが成り立ってるのでは?あれも定額の中で使える話ですよね」と投げた。調べてもらうと仮説はほぼ当たりで、因果はむしろ逆だった。App Serverという「入口を選ばずサブスクに着地させる」設計が先にあり、他社ハーネス容認はその既定路線の延長だった。
そこから戦略談義になった。自分の読みはこう。OpenAIは計算資源を大量に買い込み、競合のユーザーを奪って囲い込み、ハーネスの上にエコシステムを作らせてロックインする。Anthropicは確保している計算資源の量からしてこの手を取れない、とOpenAIは踏んでいる。返ってきた答えもこの読みと整合していた。「サブスク定額のまま使い放題」はGPUを余らせるほど積んでいる側にしか打てない手で、Anthropicは逆にヘビーユーザーのレート制限を強化する方向に動いてきた。両社の打ち手は計算資源の在庫量をそのまま映している。
ただし「ロックインした上で値上げ」には留保が付いた。OpenAI自身が「モデルは環境変数1本で乗り換えられる」世界を推進しているので、モデルではロックインを作れない。だからApple類比で言う堀は、ハード単体ではなく「ハード+ID+配布+データ+課金」の垂直スタックになる。配布層にあたるApp ServerとChatGPT内アプリに日本の税務がつながったらどうなるか、という思考実験まで転がして、後半の議論を独立記事にまとめさせた。
この記事は一発では決まらなかった。最初に出てきたBefore/After対比の図を見て「ビフォーはいらない、アフターだけに集中して」と作り直させ、「アプリとアプリの接続はどうなるのか」という追加の疑問を新セクション+図6として足させた。最終的に図6枚。判断は自分、描き直しはAI、という分担で回した。
「データがスイッチングコストになる」説には食い下がった
議論の途中、「ベンダーのサーバー側にユーザーのデータが溜まり続けることがスイッチングコストになる」という説明が出てきた。ここは懐疑的だったので、そのまま食い下がった。自分のデータは自分のローカルにある。クラウド側の会話データは削除される前提のはずで、業務のコンテキストはローカルにしかない。「そこはあなたの勘違いだと思う」とぶつけたら、前言撤回が返ってきた。
開発者ワークフローに関しては、データ重力によるロックインはほぼ効かない。 自分の環境がいい証拠で、CLAUDE.md・rules・memo・セッションログ・Tursoの蔵書DBと、効いている文脈資産は全部ローカルか自分管理のストレージにある。Claude Codeのセッションの正体も手元のJSONLファイルだ。開発者の文脈は「ファイル」というポータブルな形式で存在していて、明日エンジンを乗り換えてもそのまま持っていける。ロックインの効き方は開発者と一般消費者で正反対になる——この訂正込みの整理が、上のApp Server記事の柱のひとつになった。
MCP=APIのラップ? 理解を3段階で更新した
App Server記事の中で「この仕組みは既にMCPとして存在している」という一文が出てきて、ここで止まった。自分の理解では、MCPはAPIをコーディングエージェント用にラップしたもの。その理解で合っているのかを確かめたくて、個別記事としてまとめさせた。
対話の往復で、理解が3段階で更新された。
- 「MCP=APIのラップ」はほぼ正確。正しくは「ラップの標準的な作法を定めたプロトコル」で、包んだ実体がMCPサーバー。エージェントが読むのは包みの表面の宣言(ツール名・説明文・入出力スキーマ)だけで、実装は見えないまま通信が成立する
- 「人間が読んでも仕様が読み取れるのでは?」と聞いたら、ツール宣言はむしろ従来のAPI仕様書より人間に読みやすいという答え。LLMが読める形式=自然言語ベースの形式なので、「LLM向けに書く」と「人間向けに書く」がほぼ同じ行為になる
- 「じゃあエージェントは生のAPIも解析できるのでは?」と詰めたら、できると認めた上で整理が返ってきた。MCPは「エージェントにできないことを可能にする」規格ではなく、「エージェントが毎回やらなくて済むようにする」規格。生のAPI解析との差は能力ではなく、経済とガバナンスにある
会計ソフトBが公開しているAPIリファレンスを例に「あれを読ませるのと何が変わるのか」まで具体化して、この3往復分を記事に追記させた。
コードで確かめる: 会計ソフトBの公式MCPサーバーを解剖
ここまで来ると、抽象論ではなくコードベースで正確に理解したくなった。会計ソフトBの公式MCPサーバーはOSSで公開されていたので、クローンして解剖する記事を作らせた。調査はサブエージェント3体を並列で派遣し、①OpenAPI→ツール変換パイプライン、②認証・トークン・エラー処理の配管、③サーバー構成とAgent Skillsの役割分担に分けて読ませた。
設計は予想とかなり違っていて、そこが記事の目玉になった。277本のエンドポイントに対して、ツールはわずか15個。OpenAPIスキーマはツール宣言の材料ではなく実行時の検証テーブルとして働き、APIリファレンスの知識はAgent Skillsに分離されていた。「MCP=APIのラップ」という前の記事の理解が、実物のコードでは「門番と配管」として実装されている。引用したコードと数値は、公開前に元コードと突き合わせる検証工程を挟ませた。
読み終えたら次が欲しくなり、「ミニマムなAPIを自作してMCP化する一連のハンズオン講座を作ってほしい」と頼んだ。税理士・会計士向けの1コンテンツとして計画書を書かせ、Codexレビューに4往復かけて(致命的指摘10点→全反映)承認まで通した。実装は同日の別セッションに引き継ぎ、その日のうちに完成した(記録: ハンズオン講座を作った日)。
寄り道: 「教養がないと刺激でしか心を満たせない」
戦略談義と並行して、別セッションでもう1本書かせた。「教養がないと刺激でしか心を満たせない。教養があると味わうことで満たせる」というXのポストが良い言語化だと思ったので、同じことを言っている先人の言葉を集めて補強する記事にした。
8人の賢者の言葉と図解2枚。刺激と味わいの対比図も、dev環境で崩れなしを確認させてから公開準備にした。
今日の学び
- サブスクのOAuthトークンは常に発行元バックエンドに流れる。変わるのは「どのハーネスが使うか」。ハーネスとモデルを別レイヤーで見ると、ベンダー間の駆け引きが読みやすくなる
- 「定額のまま使い放題を開放する」は計算資源を余らせている側にしか打てない手。両社の打ち手はGPU在庫をそのまま映す
- AIの説明に納得できないときは食い下がる価値がある。「データ重力によるロックイン」説は、自分のローカル環境を反例に出したら撤回された
- MCPは能力の規格ではなく経済とガバナンスの規格。「毎回やらなくて済む」が正体、という一文で腹落ちした
- 対話で組んだ理解は、実物のコードで確かめると裏切られる。ツール宣言の自動生成を予想していたら、実物は手書き15ツール+実行時検証だった。この裏切りが一番の収穫
積み残し
- ミニAPI自作→MCP化のハンズオン講座を実装する(同日の別セッションで完了 → 記録)
今日公開準備した記事(5本)
- OpenAIがClaude Codeで自社モデルを動かす手順を自ら公開した。逆方向は規約違反なのに — 規約の非対称性と両社の収益構造。図3枚
- OpenAIのApp Serverに日本の税務がつながる日を考える — 5層の垂直スタックと税務アプリ接続の思考実験。図6枚
- MCPはAPIを「エージェントが読める形」に包む規格 — 「MCP=APIのラップ」理解の検証と4つの疑問。図4枚
- 公式MCPサーバーのコードを開く — 会計ソフトBのOSS実装をコード引用で解剖。図3枚
- 教養とは「お金を使わずに心を満たす能力」 — Xのポストを8人の言葉で補強。図2枚
いずれもdev環境で図の描画とコンソールエラーなしを確認させてから完成扱いにした。