5投稿で10万再生が出なければアカウントを消せ
SNSコンサルタントのド素人ホテル再建計画氏は、ショート動画のアカウントが伸びなければ「同じアカウントでトライ&エラーするな、消して作り直せ」と断言する。一見乱暴に聞こえるが、プラットフォーム側のアルゴリズムを理解すると、合理的な判断だと分かる。
プラットフォーム側の視点
ここがこの話の核心になる。クリエイター側ではなく、プラットフォーム側の立場で考える。
プラットフォームのビジネスモデル
TikTok、Instagram、YouTubeは広告収益モデルで動いている。面白いクリエイターが増えれば視聴者が増え、プラットフォームが儲かる。だから有能なクリエイターを見つけて伸ばしたい。これがプラットフォーム側のインセンティブだ。
新規クリエイターの「ボーナスリーチ」
問題は、新しくアカウントを作った人間が有能か無能か、プラットフォーム側には分からないことだ。
動画の中身をAIが事前に評価して「面白い/面白くない」を判定する技術は、まだ完全ではない(ド素人氏いわく「そろそろできるようになると思うけど」)。だからプラットフォームは、新規クリエイターの1投稿目を500〜1,000人に試しに配信する。これがボーナスリーチだ。
ボーナスリーチの目的はABテストに近い。実際の視聴者の反応(視聴維持率、フォロー率、いいね率)を見て、このクリエイターが有能かどうかを判定する。
ボーナスリーチの減衰
1投稿目に近いほどボーナスリーチは大きい。プラットフォーム側にデータがないからだ。逆に投稿数が増えるほどデータが蓄積され、ボーナスは消えていく。
ここで2つの道が分かれる。
バズった場合: プラットフォームのAIが「有能なクリエイターが来た。応援しよう」と判断し、以降の投稿にも積極的にリーチを配分する。1投稿目で100万再生が出れば、アカウントパワーが一気に跳ね上がる。
バズらなかった場合: 5投稿ともつまらなければ「このクリエイターは伸ばしても意味がない」とAIが判断する。アカウントパワーが大幅に下がり、6投稿目に良い動画を出しても、もう信用がないから伸びない。
なぜ「同じアカウントで改善」ではダメなのか
直感的には、失敗を分析して同じアカウントで改善すればいいと思う。だが、アルゴリズムの観点ではこれは不利だ。
| 方法 | ボーナスリーチ | アカウントパワー |
|---|---|---|
| 同じアカウントで改善 | 消費済み。もう出ない | 5投稿の失敗で低下している |
| 削除して新アカウント | 再び獲得できる | ゼロからスタート(低下していない) |
同じアカウントで続けるのは、ボーナスリーチを使い切った上にアカウントパワーまで下がった状態で戦うことを意味する。新アカウントなら、ボーナスリーチをもう一度最大値で使える。
3〜5投稿で10万再生の根拠
レコメンドシステムでは、面白いものが伸び、つまらないものが伸びない。フォロワー数はほとんど関係ない。
正しくバズる内容を投稿していれば、ボーナスリーチと合わせて3〜5投稿以内に10万再生が出る。出なければ、以下のどこかに問題がある。
- 冒頭2秒: 感情のトリガーが引けていない
- チャンネル全体の設計: ストーリー性がない、フォロー動機がない
- 編集: テンポが悪い、テロップが見づらい
- 撮影: ビジュアルフックがない
- 喋り方: 棒読み、聞き取りづらい
作り直しの手順
- アカウントを削除する: 残さない。完全に消す
- 同じ動画は再投稿しない: プラットフォームのAIが同一コンテンツを認識する可能性がある
- 問題を特定して修正する: 冒頭なのか、設計なのか、編集なのかを判断する
- 新アカウントを作成する: ボーナスリーチが再びつく
- 最初の1投稿に全力を注ぐ: ここが最大のチャンス
プラットフォーム別の温度差
| プラットフォーム | ユーザー層 | コンテンツ性質 | レコメンド強度 | フォロワーの影響 | 作り直し判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| TikTok | 若い。toC向け | フロー型。受け身で流し見 | 最強 | ほぼ関係ない。滑れば伸びない | 5投稿以内で判断 |
| Instagram リール | 若い。toC向け | フロー型。TikTokよりストック寄り | 強い | やや影響あり。5万フォロワーなら2万リーチ | 5投稿以内で判断 |
| YouTube ショート | TikTokに近い | フロー型 | TikTokに近い | やや影響あり | 5投稿以内で判断 |
| X(旧Twitter) | 経営者・決済権限者。リテラシー高い | 文字中心。toB向け発信に向く | 移行中 | まだフォロワーの影響が残る | ケースバイケース |
| YouTube ロング | 幅広い | ストック型。検索・教育に強い | 弱い | 牽引性高い | 作り直し不要 |
TikTok・Instagramの属性
TikTokとInstagramはユーザーが若く、toC向けのエンタメコンテンツと相性が良い。検索して見に来るのではなく、受け身でスワイプしている。だから「教育」が不要で、一発でバズれるアルゴリズムが組まれている。
ド素人氏はこの2つをtoC向け(ホテルの再建プロセス、アクシデント等のエンタメ)に使い、Xはto゙向け(成果報告→コンサル案件の獲得)に使い分けている。プラットフォームごとに届く相手が違うから、同じ動画を全部に投げるのではなく、誰に届けたいかでプラットフォームを選ぶ。
TikTokが最もシビアで、フォロワーが何万人いてもつまらない投稿は伸びない。逆に言えば、フォロワーゼロの新アカウントでも面白ければ一気にバズる。この構造こそが「消して作り直す」戦略を成立させている。
同じ動画を3つ以上のプラットフォームに投げない
「全プラットフォームに同じ動画を投稿すればリーチが最大化する」と考えがちだが、ド素人氏はこれを明確に否定する。最大2つまで。ロジックはこうだ。
熱心なファンが「最悪のユーザー」に変わる
熱心なファンほど複数のプラットフォームでフォローしてくれる。そしてこの層は動画を最後まで見て、いいねやシェアもしてくれる、アカウントを伸ばしてくれる最良のユーザーだ。
ところが同じ動画が6つのプラットフォームに投稿されていたらどうなるか。
- Instagramで今日の動画を最後まで見る
- 次にTikTokを開く → 同じ動画が出てくる → 「さっき見た」→ 即スワイプ
- YouTubeを開く → また同じ動画 → 即スワイプ
「最後まで見てくれる最良のユーザー」が「即スワイプする最悪のユーザー」に変わる。即スワイプは視聴維持率を下げ、アルゴリズムに「つまらない動画」と判定される。熱心なファンが多いほど、この悪影響が大きくなる。
ド素人氏の使い分け
| 用途 | プラットフォーム | 投稿数 |
|---|---|---|
| toC(エンタメ) | TikTok + Instagram | 2つまで |
| toB(実績発信) | X + Threads | 2つまで |
| 認知獲得 | YouTube | 自分では運用せず、ゲスト出演 |
各用途で最大2つに抑えている。TikTokとInstagramはユーザー層がそこまで被らないと判断。YouTubeはゲスト出演で認知を取る場として割り切っており、自分で運用する手間を省いている。
公式アカウントの罠
企業が「〇〇株式会社 公式」としてアカウントを作ると、これも伸びない原因になる。
- SNSでは会社より人のほうがIPとして強い
- ソフトバンクのアカウントより孫正義のアカウントのほうがフォロワーが多い
- 堅苦しい公式アカウントは若い人が見たいと思わない
ド素人氏は公式アカウントを一度も作ったことがない。ゴミ運搬企業のアカウントは「〇〇株式会社」ではなく「日本からゴミをなくす男」。ホテルのアカウントも「〇〇リゾート公式」ではなく「ド素人ホテル再建計画」。
アカウント名の作り直し方
アカウントを消して作り直すとき、名前と切り口もセットで変える。同じ名前では再投稿を認識される可能性がある上に、伸びなかった名前には何かしら問題があるからだ。
言い換えで再チャレンジする
コンセプトの本質を残しつつ、表現だけを変える。ゴミ運搬企業のアカウントを例に考える。
| 試行 | アカウント名 | 切り口 |
|---|---|---|
| 1回目 | 日本からゴミをなくす男 | 社会貢献×挑戦 |
| 伸びなかった場合 ↓ | ||
| 2回目案A | 毎日ゴミを拾い続ける男 | 継続×ドキュメンタリー |
| 2回目案B | ゴミ拾いで日本一周する男 | 旅×社会貢献 |
| 2回目案C | 1日100kgゴミを拾う男 | 数字×チャレンジ |
同じ「ゴミを拾う」というコンセプトでも、切り口の角度を変えれば別のフックが生まれる。目的(企業のPR・採用)は変えず、入口だけを差し替える。
アカウント名の設計原則
ド素人氏のアカウント名にはパターンがある。
- 会社名を使わない: 「〇〇株式会社」ではなく人にフォーカスする
- 何をする人か一目で分かる: 「日本からゴミをなくす男」「ド素人ホテル再建計画」
- ストーリーの予感がある: 「本当にできるのか?」と思わせる要素を含む
- 弱者であることが伝わる: 「ド素人」「1人で」など、応援したくなる立場を示す
伸びなかった場合は、この4つのうちどれが弱かったかを判断して名前を作り直す。
注意点
- 過去のアカウントは完全に削除する
- 同じ動画の再投稿はしない(AIが同一コンテンツを認識する)
- 名前だけでなく、冒頭の設計や編集の問題も同時に修正する
- 名前を変えても中身が同じなら結果は変わらない
人にフォーカスしたアカウントを作り、伸びなければ消して作り直す。名前と切り口を変え、ボーナスリーチを活かして再挑戦する。この繰り返しが、ド素人氏のアカウント設計の根幹にある。